「告白」
登場人物
A=男子生徒
B=女子生徒
この台本は上演を想定されていない。
7月、夏休みに入る直前の高校の屋上。
夕方、放課後。
上手側にB=女子生徒、下手側を向いて、うつむいて立つ。
下手側からA=男子生徒登場。
A「ごめん、待った?」
B「ううん」
A「ここ初めて来た」
B「うん。綺麗だよね」
A「うん。話って何?」
B「ええっと・・・」
A「・・・」
B「社会科の時間で、フィールドワークあったじゃん」
A「うん」
B「あの時に一緒にグループワークできて、すごく楽しかった」
A「そうか」
B「・・・あんまりそうは思わなかったかな」
A「いや、そんなことないよ」
A、結論をうながす様子で
A「話って?」
B「えっと」
晴れていたのに突然、厚い雨雲が垂れ込め、そこそこの雨が降り始める。
Aは嫌そうな顔をするが、Bは雨などは全く気にしない様子。
B「わたしね、昔から内気な性格で、うちって、大家族なんだけど、中でも大叔母の影響力がとっても強くて、大叔母の顔色を常に窺っている環境で育ったのね。」
A「・・・」
雨が次第に強くなり、黒澤明の映画で降っているのと同じ、(実際に)墨汁が混ざった雨が降る。風も強くなる。
B「その大叔父っていうのが、定期的にパーティを開くのが好きで、で、別に、うちの家族について知ってもらうことが、のちのちその、結婚とか、いやそういうことを考えてるわけじゃないけど」
A「・・・」
墨汁で真っ黒に染まった二人。雷も鳴り始める。
B「でも家族について知ってもらうことは、私を知ってもらうことにも繋がるかなっていうか」
A「あっ」
AとB両方に落雷し、二人とも直立したまま黒焦げになって絶命するが、意識は話し続ける。死体のそばにはAとBの魂が(一般的に思われているような人魂のような形ではなく、A=ネジのような形とB=ウニのような形の発光体が)落ちている。
B「・・・なんでこういう回りくどい説明から入っちゃったかっていうと、私は自己紹介とかが苦手で、自分を説明する時に周りのものを説明することで、輪郭としての私を浮かび上がらせたいっていう思いがあって」
A「・・・」
屋上の地面から餓鬼が3匹湧き出し、炭になったAと Bの体躯を喰い始める。餓鬼は魂には興味なし。
B「だから、なんていうか・・・付き合ってください」
A「・・・いいよ」
B「やった、でも私たちの容れ物がなくなっちゃった」
A「・・・そうね」
B「ごめんね、私の話が長かったからだよね」
A「いや・・・全然・・・」
B「でもこれからどうしよう・・・」
A「・・・」
AとB、取り急ぎ餓鬼の身体を乗っ取る。ここから高校生に戻るまでの道のりはかなり面倒臭い。人間に戻れるかどうかもかなり怪しい。戻れたとしても別の身体に入るわけなので完全に別人として過ごし直さなければならない。その点を考えていなかったのはAもBも愚かだと言わざるを得ないだろう。告白は屋内で簡潔にすべきである。
終
ーーー
あとがき
これは現在通っている「ことばの学校 演習科」の課題で、800字〜1200字で「告白」もしくは「運命」のどちらかのワードをお題にしてなんか書け、という課題で提出しました。
こういうことを考えても提出する場がなかったのでやれてよかったです。