【怪文書】正しいラーメンの食べ方

ラーメンの正しい食べ方についてお話しします。

今の日本人は誰も、ラーメンの正しい食べ方について知っていない。

 

それは、スープから先に飲むのが礼儀だとか、私語をしないで食べ切るのがマナーだとか、そういう話では全くありません。

 

皆さんは、「箱庭療法」についてご存知でしょうか?

箱庭療法は、セラピストが見守る中、クライエントが自発的に、砂の入った箱の中にミニチュア玩具を置き、また砂自体を使って、自由に何かを表現したり、遊ぶことを通して行う心理療法」です。(一般社団法人 日本心理士会 の定義より)

 

患者は、思い思いの箱庭を作ることで、その時の精神状態を再現し、癒やされてゆくのです。

 

察しのいい皆さんならもうお分かりでしょう。

ラーメンとは、なんなのか。

それは、店主の精神状態がそのまま反映された、箱庭なのです。

 

つまり、箱庭の意味を読み解くことが、何よりも最初にすべきことなのです。

このチャーシューの配置は、何を象徴しているのか?

ここに浮かんでいる背脂は、なんのメタファーなのか?

刺さっている海苔が意味しているのは、「断絶」か、あるいは「保護」か・・・?

 

意味を読み解くことから始めましょう。

そして、食べ始める前に、あなたなりの解釈を、メモしておきましょう。

ラーメン屋に、紙とペンを持参することが必須なのは、そのためです。

 

そして、あなたなりの解釈をし終えたなら、次にすべきことは、店主に「ことば」をかけてやることです。

「箱庭」を見て、ノーリアクションでは、礼節を欠きます。

店主の精神状態に合わせた、「ことば」をかけてあげましょう。

(例:「大丈夫、あなたが断絶だと思っているその壁は、あなたを守るための壁なのですよ」など)

 

可能なら、店主と話し込むのも良いでしょう。

「箱庭」の解釈について十分話し合って、お互いの心のわだかまりがほぐれたら、割り箸を割ってもらって大丈夫です。

 

ここまで、平均的には、20分を要するでしょう。

 

行き交う情報が加速した現代、誰もがラーメンの本当のあり方を忘れてしまっています。

今一度、基本にかえって、ラーメンの正しい食べ方、否、正しい「読解」を行なってみてはいかがでしょうか。

 

私は、解釈までは辿り着いても、店主との対話に成功した経験はありませんが、皆さんならできるはずです。

頑張ってください。

 

〈終〉